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管理費等の滞納対策
はじめに
管理費等の滞納で悩んでいる管理組合は多いようです。
滞納金額は数千万円もあり、定期的に行う修繕もできないマンションもあり快
適な生活に支障をきたしているようです。
しかし、管理会社も根本的な対応をしてくれないのが実状です。
一方では、管理費等の時効は5年間が有力になっており、区分所有者の一部に
は「真面目に支払うだけ損」と主張しているといわれております。
当マンションは、平成11年(1999)の3月に入居が始まりデベロッパー傘下の
管理会社が管理を開始しました。
その年の12月に自主的な管理組合を立ち上げ、翌年の初夏頃には当初の管理
組合と手を切りましたが、すでに数百万円の滞納金が発生しておりました。
私たちは試行錯誤しながら管理費の滞納を回収に、ひとつの解決策を見出しま
した。
本文が滞納問題で悩んでいる管理組合の解決のヒントになれば幸いです。
1 管理費の滞納は、なぜ発生するのか
住居の購入は最低でも2割ぐらいの頭金と、引っ越しなどの諸費用は予め用意
したものですが、バブル後は販売業者が保証人となり頭金も諸費用も借り入れ
る住戸も多く、返済金が多くなり管理費が支払えなくなるというケースが多い
ようです。
当マンションが販売時には10年後から借入金の利息が多くなるシステムを利
用した住戸も多く、今後は従来より支払が増えることで滞納に影響が表れるこ
とが懸念されます。
他には事業の失敗やリストラ、離婚、消費者金融に手を出し破産に追い込まれ
滞納につながるケースもあります。
2 立ち直れない、3ケ月以上の滞納者
管理費等は決められた日に納入することは当たり前のことですが、諸々の理由
で滞納となります。
こうした場合、2ケ月程度の滞納が限界で3ケ月以上溜まると、ほとんどの住
戸は以後の納入が出来なくなっていると判断できます。
したがって、1〜2ケ月分の滞納対策を行わないと長期滞納者に移行してしま
う恐れがあります。
なお、行楽で使うお金や携帯電話に支払うお金があっても、管理費は納入し
ない風潮は断じて認めることはできないのです。
3 「管理費等」とは何か
それぞれの管理組合の規約には「管理費」とか「管理費等」の文言がありま
すが、その中身は何かということです。
当管理組合は「管理費等」は次のように決めております。
1 管理費
2 修繕積立金
3 専用使用料(トランクルーム・専用庭等の使用料)
4 契約使用料(駐車場使用料)
5 水道使用料
6 総会で決定した費用(集会室使用料・自転車置場使用料・その他、特別徴収
 金)
規約では「管理費等」は区分所有者の債権は継承者にも適用することを明示し
ており、管理費等の滞納金は新たに住戸の所有者になった者が支払うことを管
理規約で定めているのです。
「管理費等」を巡って面白いことがありました。
ある住戸が競売に掛った時に東京の仲介業者が落札し担当者が当マンションに
来て次のように主張しました。
「当社は顧問弁護士の指導で落札した場合は管理費と修繕積立金の滞納分しか
支払ったことがない」
管理人は担当者に当管理組合の規約を渡して別れました。
その後、落札した仲介会社の担当者から電話があり、「弁護士に規約を見て頂
いたら水道料も駐車場使用料の滞納金も全て払いなさいというアドバイスを得
ましたので、早速振り込みます。」
一切の滞納金と年利14%の遅延損害金が管理組合の口座に振込まれたことは
いうまでもありません。
管理会社やマンションの専門家と呼ばれる人たちの中には、「管理費等は一般
管理費と修繕積立金」の固定観念があることが現状です。
管理組合は組合員の任意の組織であり、もっと組合員の総意で物事を決めるこ
とが必要ではないかと考えています。
4 裁判所は管理費等の滞納分を落札者が支払うことを認めている
マンションを購入する時に金融機関から借入を行った物件の支払いが困難にな
ったとします。
金融機関への支払いが何回か行われないと、裁判所に対して競売申請が行われ
ます。裁判所は競売が必要と認めた時には事務官がマンションを訪問し、鍵業
者が立会い住戸内を調べたり管理会社や管理員から管理費等の滞納金を確認し
ます。
この場合、管理費と修繕積立金80万円なのか一切の滞納金100万円を事務官
に申請するかが、後々の分岐点になるわけです。
例えば、裁判所は物件の最低落札価格を2000万円にしたい場合は、100万円
を差し引き1900万円を最低落札価格に設定するため、管理費等の滞納金は落
札者が支払うことが折込み済みといえます。
5 管理規約や細則で決めておくことが必要
「管理費等」とは何か?を管理規約で明確にするように、滞納対策についても
規約や細則ではっきりと決めておくことが必要です。
当管理組合では、管理規約で「管理費等は何か」と「一切の管理費等の債権は
承継人に」を決め、詳細は「管理費等の滞納措置に関する細則」で定めており
ます。
細則では一定の期間の滞納住戸に対しては給水制限から氏名の公表を行うこと
が決められています。
氏名公表も滞納住戸のプライバシーより、通常の納入者がどの滞納者の管理
費を立替えているのか、知る権利に重きをおいているわけです。
6 滞納はなくならない
厳しい滞納対策を決めていても滞納はなくなりません。
しかし、ほとんどの滞納住戸は金融機関からの借入があり、競売に付される
ため滞納金は100%回収しています。
しかも、「14%の遅延損害金」も回収対象のため、滞納が増えると管理費が
多くなるという現象となっているほどです。
当マンションは、他のマンションより競売になった住戸の比率は多いかも知
れません。
仲介業者も「こんな厳しいマンションは顧客に紹介できない」のではなく、
管理がしっかりしているという評判を頂戴していることは嬉しい限りです。
                                以上
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